院長室 WEBLOG

院長の気が向いた時しか綴らない治療記録・症例・備忘録【ひかり自律整体療術院(つかさ接骨院)】
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また? 「なんちゃって脊柱管狭窄症」

 脊柱管狭窄症と診断され、痛みは注射で抑えるしかないと言われて、ほぼ毎日のように通うも、鎮痛するのは病院から帰宅して3時間弱の束の間だけ。3ヶ月も絶え間なく続いている余りの痛みに「もう死にたい」というお婆さん(の知人、以前当院の患者さん)から年末近くのある夕方に電話があった。

 「もう治らない」から痛み止めの注射を打ち続けるしかないと絶望的な宣告を受けて以来3ヶ月間、注射とリハビリほぼ一日置きに。当院に来られる患者さんは大抵こんな人々なので、それ自体は驚きはしないが、自殺が脳裏をよぎるまでの痛みは如何程か。

 しかし生憎、特に年末の当院はなぜか例年大混雑する。年中は最早満員で一つも施術枠が残っていない。キャンセルでも出れば話は別だが望みは薄い。と思っていたら神は見捨てなかったか、某大企業の実業団(マラソン)の選手が急に都合が悪くなり複数抑えてあるうちの予約枠のひとつに「キャンセル、キターーーーーーっ!」

 と言っても10日も先のキャンセル。そしてお婆さんの時間の都合もあるがとりあえずお伝えした。酷い痛みを抱えたお婆さんを10日待たせるのか?最悪、今日の最終枠の更に後に回ってもらえば(高齢のお婆さん<御年86歳>には常識的時間帯ではないが)本日施術は可能である旨お伝えして受話器を置く。
 お婆さんの知人の方(元患者さん)は本人に伝えるとのことで保留になっていたが、どうにも痛いので、夜晩くなってもいいから今日診てほしいと再び電話連絡があった。’非常識な時間’での施術か10日先の施術を待つかの選択だったのだろう。

 「やるしかない・・よな?俺。うん、やるしかない。」

  当院にとっては21時、22時は非常識な時間帯ではないが、お婆さんにとってそんな時間からの開始は、施術終了後、下手をすると帰宅時間が時計のテッペン過ぎる可能性もある。
 その日の最終の不妊治療後方支援の患者さんの後に回ってもらい、21時30分過ぎから着手。

 整形外科でもらったという脊柱管狭窄症の図説にはドクターのものと思われるメモ。『 L4/5 』とだけある。腰椎4番5番間の馬尾神経圧迫の意味だ。患者さんが「トンネルに入って・・」(=MRIのこと)とおっしゃるので画像によるエビデンスもあるのだろうし、実際に脊柱管内で高位 L4-5 に狭窄があるのだろう。そしてドクターによる診断名は「脊柱管狭窄症」。また、ドクターも画像を見て確定診断したと思われる。実際に狭窄部があるのだから脊柱管狭窄症で何がいけないのか、いけないはずは「常識的には」ない。常識的には・・・。

 しかし、しかし、しかししかししかぁーし!それにしちゃぁ、出ている症状が余りにも脊柱管狭窄症とは違うんでねーかぃ?
 脊柱管狭窄症は「症状名」であって、原因ではないので、原因がヘルニア、そしてそのヘルニアによる狭窄があれば、これも脊柱管狭窄症ではあるが、ここでの脊柱管狭窄症は間欠跛行をともなう典型例をいう。
 問診の段階では、間欠跛行も一切ない。ただ出ている症状は腰椎椎間板ヘルニアによる馬尾神経の圧迫そのもの。痺れや痛みの出ている箇所も L4-5 に馬尾神経圧迫がある場合に合致する。それと梨状筋下孔から坐骨神経がでてくるポイントにも。

 この段階で「どうもこりゃ、いつものアレか?」とアレがアレ的に直感してアレな感じになってきたのでアレするしかない。

 よくある「なんちゃって・・なアレ」だ。当院で幾度となく経験してきた『画像診断では明らかに脊柱管内に狭窄が認められるのに、その狭窄が症状の直接的原因ではなく、手技療法による施術であっさり無症状になってしまうというアレ』のことだ。実際にMRIでも狭窄部位ははっきり描出されているのだから、脊柱管狭窄であることに異論はないが、出ている症状の直接的原因ではないというアレなのだ。


 まあ、施術してみりゃ直ぐに判る。


 というわけで、SLRから始まる各種徒手検査を次々と実施。やればやるほど椎間板ヘルニアの色がどんどん濃くなってくる。

 では、椎間板ヘルニアかというと、これまたよく遭遇する『椎間板ヘルニアの診断が下っているし、ヘルニアそっくりの症状でも、実は結果的にヘルニアでない「なんちゃってヘルニア」であるケース』かもしれないということも念頭に慎重に検査と施術を進める。

 検査時に判明している異常所見を念頭に、「なんちゃって脊柱管狭窄用の施術」(笑)を2種、次いで「なんちゃってヘルニア用の施術」を1種、両者に共通の「なんちゃってスタンダード(仮称)」を1種と連続で畳み掛ける。みるみる痛みが引いていった。それでも30分程度は要した。

 ほらねっ!「なんちゃって脊柱管狭窄」でしょ!86歳のご高齢に腰椎椎間板ヘルニアはまず起こらない。椎間板自体が既に硬くなっているので髄核が飛び出てこないからだ。運動量も多いし、無茶もする、柔軟(過ぎるぐらい)な椎間板を持っている思春期ならいざ知らず。
 真性の脊柱管狭窄症だったり、真性の椎間板ヘルニアだったりしたら、痛みや痺れは7、8割方は軽減して患者さんに笑顔が戻ってくるものの、たった1回の施術では「完全無痛」になるまでに導けるわけがない。しかし結果はどうだ。「全然痛くない」(患者さん申告)じゃないか。

 ということで、患者さんは全く痛みを感じなくなって、当院を紹介して連れて来てくださった知人の方(以前、ご来院の患者さん)や私にこちらが恐縮するぐらい何度も何度も何度も感謝の言葉を述べられ、「地獄に仏」「神か仏か」とまで言っていただいたが、院長は「安城にただのおっさん」「オヤジかおっさんか」に過ぎないので、いつか改めて訂正していただこう。

 一生痛み止めの注射を打ち続けなきゃならない、しかもその効き目がわずか3時間程度、座薬を使用しても効かず、毎日残りの21時間は痛いまま、それもいつ楽になれるのか終わりが見えない苦痛では、「もう死にたくなる」なんて言いたくもなるよね。これからもずっと続くのかと痛みの只中にある患者さんの絶望感は本人じゃなきゃ判らない。
 死にたくなると言いたくもなる気持ちはわからないでもないが、やっぱり死んじゃぁ駄目だよ、おばあちゃん。だって、実際にあっけなく治って、「何だったの?今までの痛みは?」と思える今、「(結果的とはいえ)こんなこと」で死んだとしたら、きっと後悔してたでしょう。


 こういうヘルニアや今回の狭窄症に限らず、「なんちゃってシリーズ」を当院では飽きるほど診てきた。勿論、画像検査といえるものは当院では超音波観察装置しか使えないわけだから、脊柱管内の狭窄やヘルニアには椎骨が邪魔して無力だ。だから「なんちゃって」だったのかどうかは施術した結果でしか鑑別できない。結果、脊柱管狭窄症の確定診断だろうと画像によるエビデンスがあろうと、患者さんにとっては治ったか治らないかだけが、真の評価なのだから、結果オーライ・・それでいい。

 MRIによる画像に厳として脊髄の狭窄部が映っているからといって、それがこのお婆さんの「死にたくなる」激痛の直接的原因とは限らない。これは本当に臨床上よく経験することなのだ。

 「脊柱管狭窄症の診断→やっぱり治せない」という図式では、やっぱり脊柱管狭窄があるから治らないんだね、で通用するし皆納得してしまうが、「脊柱管狭窄症の診断→それでも治った」という図式を臨床上何度も経験したからこそ「狭窄症が激痛の直接的原因とは限らない」と言い切れるのだ。


 当院に限らず、こうした症例は世間にもあるはずだ。すると予想通り、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアと確定診断が下っている症例をこうして治すと直ぐに、「俺はたった1回の施術で治した!」という整体なんちゃらが涌いて出てくる。単なる能天気なお馬鹿さんだろう。

 真相はもっともっと単純なことなのだ。

 画像検査でも脊柱管に狭窄部位(生理的狭窄を除く)が認めらているのだから、ドクターの診断に嘘はない。しかし(施術者の腕にもよるが)たった1回で無症状になったのも事実。一体どういうことか?
 やっぱりドクターの誤診だったのか、それとも診断は正しいが整体なんちゃらの腕が奇跡的神技なのか?
いやいやいやいや、どっちでもないんだな、これが。

 ドクターの誤診でもなければ、整体なんちゃらの腕がキセキ的なカミ技であるわけでもない。
(もっとも、腕の悪い柔整師や整体なんちゃらでは、1回で結果は出せないので論外。お話にもならないので話はしない。本当は1回で結果を出せるのに、出せない整体なんちゃらや柔道整復師は、「整形でヘルニアとか狭窄症って診断されてんだろ?1回で結果でなくて当然だ。何度も何度もウチに通ってればそのうちひょっとしたら治る(かもね)」って自らを納得させてるんだろうか。)

 どちらでもないと言い切れるその真相は・・・まあ、この先、書くのがそろそろ面倒になってきたので、ヘルニアを例にして、当院ホームページの「ICUシリーズ」に「なんちゃっての真相」を譲ろう。

http://hikari-ubiquitous.com/icu_hernia.htm


 こうして、当院と縁が出来て、このお婆さんの3ヶ月に及ぶ痛みで眠れぬ夜は終わった。

お婆ちゃん、お大事に!

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